■とっておきのキミ(1)■

【はじめに】
パラレル設定、約3年後です。
W遊戯別体、W獏良別体フリーダム。

武藤遊戯…実家のゲームショップを手伝いつつ、KC社長が構想を練っているデュエリスト学校設立の補佐役として日々奮闘中。
武藤アテム…大学院へ飛び級し、エジプト考古学を研究するチームに所属。デュエリストとしてフリーで活躍中。
城之内…フリーターでバイト掛け持ち。KCより営業部への引き抜きあり、現在待遇面で交渉中。
本田…御伽の仕事を手伝っている。
御伽…ゲームデザイン事務所を経営。小さいながら、KCやI2とも業務提携する等の実績あり。
杏子…アメリカへ留学中。
獏良…アテムと同じ考古学チームに所属。
バクラ…獏良家の居候兼主夫。

その日は久しぶりに旧友達が集まっていた。
高校を卒業してから各々が思う道へ進み、忙しさにかまけてロクに会えないまま今日に至る。
今回は、遊戯達が実家を出ると言う事で引越しの手伝い要員を声掛けしたのがきっかけとなり、全員が揃ったのだ。
そんな状況である。手伝いもそこそこに休憩と銘打っては雑談し、懐かしい話から現在の状況など話すネタは尽きない。

「けど、本当に久しぶりだよなぁ。遊戯達の引越しに乗じて来てみて良かったぜ。」
「そう言えば、城之内君はKCから引き抜き掛かってたよね?あれ、返事した?ボク、海馬君と顔合わすたびに聞かれるんだけど。」

現在遊戯は、実家の店を手伝う傍らKCに業務委託として出向している。
海馬の打ち出した「デュエリスト育成プロジェクト」なる企画の重要な仕事を請け負っているらしい。
一方の城之内は、持ち前のバイタリティーと口八丁さ(笑)を見込まれKCの社員にならないかと、アプローチを受けている最中だった。

「わりぃ、わりぃ。なんかさ、条件は良いとは思うんだ。だけどよー、海馬の下で働くっつーのがさ。なんか、こう…微妙なんだよなぁ。」
「城之内の気持ちもわからないでもないけど…。バイト掛け持つ位なら定職に就いた方がいいんじゃないかなって、アタシは思うわ。」
「ま、海馬に扱き使われるのは目に見えてるけどな。」
「本田君、そんな言い方したら城之内君の心が揺らぐじゃないか。僕は賛成かな、城之内君が営業部に居てくれれば次世代DDDの話も持って行きやすそうだし。」

背景コンビ(おっと、失礼)御伽と本田は、静香ちゃんを巡る恋のライバルから一転、ビジネスのパートナーになっていた。
本田が押しかけた、と言う説もあるが真相は分からない。

「みんな、何かしら繋がってるんだね。社会人じゃないボクからすると、ちょっと…羨ましいな。」
「アタシも学生。確かに獏良君の言うとおり、ちょっぴり羨ましい。」

獏良と杏子は進学組。
ダンサーになる夢を叶える為に単身渡米した杏子は、メンバーの中で一番ご無沙汰している。
獏良は千年アイテムの元保持者である由縁か、大学でエジプト考古学の研究チームに所属。
そして、これも因果だろうか。転生したアテムも同じチームにいた。

「あれ、そう言えばアテムとバクラはどこ行っちゃったのかしら?」
「あの二人なら奥でまだ家具とか動かしてるよ。」
「え、まだやってたの?細かいところはボク達だけでやるからって言っておいたのに。もう一人のバクラ君までつき合わせちゃって…」
「遊戯君は気にしないでいいよ。居候なんだから、こう言う時くらい目いっぱい働いて貰わないとね。」
「そ、そう?」
「そうそう。」

しれっと笑顔で言い放つ獏良を見て、遊戯はもう一人のバクラが少し気の毒になった。

さて。
皆が雑談に花を咲かせている時、元闇コンビは何をしていたかと言うと…。

「王様よぉ、これはここでいいんじゃねーの?」
「ダメだ!この位置だと、部屋で寛ぐ相棒が見えない。」
「どんだけ見てたら気が済むんだよ!これから一緒に住むんだろ?別に四六時中見てなくたっていいだろーがッ。」
「四六時間じゃ足りないぜ。お互い仕事してるし、帰ってからのオレの癒しは相棒観察だからな。」
「…それ、本人の前で言ってみな。ぜってー引かれるぜ。つか、もう…オレ様帰りたいんだが。」
「ちょっと待て、オレ一人で動かせないだろ。最後まで付き合え。」
「何でオレ様が付き合わなくちゃいけねーんだよ!その位、後で相棒とやれっての!!」
「相棒には、箸より重いものは持たせたくない。」
「馬鹿か!本気で言ってんじゃねーよな?冗談だよな?」
「オレは冗談は言わないぜ?」
「………無いわ。」

絶賛、コント中だった。

そんなバクラの心の悲鳴に気付いたのか、遊戯がバクラを呼びにやって来る。

「バクラ君、そろそろみんな帰るって。」
「マジか!助かったぜ、オレ様もうクタクタ…」
「おい、帰る前にこれだけ手伝って行け。」
「<もう一人のボク>いい加減にしなよ?バクラ君困ってるじゃない。」
「でも相棒、ここは譲れないぜ。」
「そんなのどーだっていいよ。ほら、キミも来る!」
「そんな…の?(微妙にしょんぼり)」

鶴の一声ならぬ、『相棒の一声』にしぶしぶ諦めるアテム。
遊戯の後を追う様に、みんなの元へと移動した。
帰り支度を終えた一同に、遊戯が改まって挨拶をする。

「みんな、今日はホントにありがとう!おかげで助かりました。」
「引越しの挨拶代わりって事で、お約束の蕎麦を用意したぜ。帰ったら茹でて食ってくれ。」
「あと、重くなっちゃうかなと思ったんだけど、ワイン入れとくから持って帰ってね。」
「それは、相棒とオレとで選んだんだぜ。(ちょっと自慢げ)」
「さんきゅーな!ありがたく貰ってくぜ!!」

城之内の言葉に便乗するように、みんなが頷く。

「そうやって並んで立ってると、なんか、新婚さんみたいだね。」
「え!?」
「やだぁ、獏良君。ホントにそんな感じに見えてくるじゃない!」
「まんざらでも無さそうなのが、約1名いるけどな。なぁ、王さ…」

アテムの額にウジャト眼の光が見えた気がして、バクラは慌てて口を噤んだ。
獏良の言葉にみんなが爆笑し、遊戯だけが真っ赤になる。
それぞれが挨拶の言葉を交わし、すっかり暗くなった戸外へと消えて行く。
二人の遊戯は、その姿を見えなくなるまで見送った。

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パラレル始めました☆
ええ、なんかもう新婚な二人ですw